キヨコさんのスーパー奮闘記「節電大作戦」

2014.01.26 Sunday

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    前回のあらすじの、原稿用紙4枚まとめの本文です。
    字数制限のない掲載紙にはまた脚色するでしょう。



              キヨコさんのスーパー奮闘記
     
              「節電大作戦」

     
    「節電」は現在、政府も電力会社も、そして全ての日本国民が、
    等しく深い関心を寄せるオールジャパンの課題である。

    国内の原発が全て稼働を停止し、火力発電のための原油輸入に
    厖大な費用が必要な今、私達は少しでも照明を落とし冷暖房を
    控え、不要不意の家電のコンセントを切ったりして節電に努め
    なければならない。

    そしてそれは、スーパーもまた然りである。

           ◇     ◇     ◇

     北風の吹く道を、かじかむ手をこすり合わせながら出勤する
    と、厨房がえらく騒々しい。
    みんなが慌ただしく冷蔵庫の品物を運び出しているのだ。
    「えっ、えっ、ど、どうしたの」
    「冷蔵庫の故障やー。もう、こんなに注文の多い日にっ」
    「なんだってえ」冷蔵庫に入ってみると、確かにほわんと暖かい。
    夏だったら品物が全滅していたところだ。

    とりあえず、鮮魚と精肉部の冷蔵庫へごちゃごちゃと無秩序に詰め
    込んだが、調理が始まって必要なものを取り出す時の困難さを考え
    ると、頭が痛くなったので考えないことにした。
     
    私達のスーパーは開店以来18年になる。
    冷蔵設備、空調、照明器具が老朽化し、最近故障が多くなって来た。
    設備が古くなった分電力の消費量も高くなっているはずだ。

    節電節電の大合唱の中、
    店長も頭の中では常に省エネ型設備への切り替えを考えていたはず
    だが、先立つものとの兼ね合い上、事は簡単ではない。
    しかし、窮すれば通ずとか、悩んでいた店長に朗報が入った。

          ◇     ◇     ◇

     原発事故以来、省エネを奨励する政府が、
    冷凍冷蔵設備や空調、照明器具を省エネ型に替え大幅節電をすると、
    費用の1/3を補助するというのだ。

    「おお、ラッキー。渡りに舟とはこのことだ」大喜びの店長はすぐさ
    ま飛び乗った。助成金をもらって改装し、電気料が安くなった分で借
    入金を返済すれば良いと、取らぬ狸の皮算用である。
     
    次の日から、大量の書類つくり、
    設備業者との折衝、銀行交渉と、東奔西走、獅子奮迅の大活躍をした
    店長は、認可が下りて工事が決定したある日、全部の従業員を集めて
    こう言った。
     
    「2月1日から10日間、工事のために閉店します」。
    一瞬、店内がシーンと静まり返った。10日間の閉店。10日間の休
    み。マジで? 10日間休める、すごーい。
     
    次の瞬間、店内は蜂の巣をつついた騒ぎとなった。
    「やった!家族旅行が出来る」「10日間の連休だよ。夢みたいだね。
    海外旅行だって出来るよね」「『飛鳥』のクルーズ旅行なんか、いいな
    あ」 なかなか連休が取りにくい職場である。
    あれも出来るこれも出来る、あれもしたいこれもしたいと、
    話はとめどなく盛り上がる。
     
    が、その時、
    「静かにせーい」と店長の声が響いた。
    「閉店したら最初の2日間は店内の片付けと掃除、
    中日に先進店視察研修、開店3日前に商品発注、品揃え、
    2日前から商品の搬入、陳列をする」

    「なーんだあ、結局休みは4日、それも飛び飛び」
    「そんな事だろうと思ったよ」
    海外旅行も豪華クルーズもあえなく沈没。あ〜あ。

          ◇     ◇     ◇

     工事は順調に進み、10日間で見事に完成。
    新品の冷蔵ケースが並べられ、エアコンも新品。
    すべての照明はLEDに変り、店内はとっても明るくなった。

    開店の日は、あの「くまモン」と、
    南関町のゆるキャラ「難関トッパ丸」がやって来て、
    くまモン体操でお客さんを大いに喜ばせてくれた。
     
     でも、でもである。
    待望の電気料の請求書を見た店長の顔が青ざめた。
    「何だ、こりゃ。予定の分安くなっとらん。
    これじゃ返済分が出らんやないか」皮算用失敗である。

    店長は電気料の値上げを計算に入れていなかったのだ。
     こうなったら精々売り上げを上げて、店長を支えなくっちゃね。
    さあ、みんな。頑張って働こう!

    (この原稿はある同窓会誌に掲載予定です)

     
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