Vol.20 うわさをすれば

2010.05.18 Tuesday

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    うわさをすれば1
    うわさをすれば2
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    Vol.20 うわさをすれば


    惣菜部が人手不足である。一ヶ月前に年輩の部員が二名、
    定年と健康上の理由で退職した後の補充が出来ないでいる。
    なにしろ、夜中の三時四時からの勤務がザラという忙しさを
    町の人みんなに知られてしまっているので、来てくれる人がいないのだ。

    従って惣菜部員は猛烈に忙しい。十人いなければ円滑に回らない
    職場を八人で回すのだから、休憩時間など全く取れないし、
    せっかくの休みを「註文が入ったから、悪いけど」というチーフ
    のひと言で取り上げられてしまうこともたびたびである。

    このままだと定番アイテムを縮小して、八人でやっていける体制
    に切り替えねばならず、そのことも「残念だよね」と、みんなに
    はストレスになっている。

    この一ヶ月、きりきり舞いの毎日を送っているわけだが、バタバタ
    いらいらしながら仕事をしていると、ケガをしたり間違えたりろく
    なことがないのでたまにはパッと花火を上げて「陽気に騒ごうよ」
    という話になった。

    仕事は山ほどあるが「忙中閑あり」という言葉もある。一晩だけ楽
    しく遊ばせてもらってもバチは当るまい。毎日毎日こんなに一生け
    んめい頑張っているんだものと、皆、自分で自分を納得させ、春も
    終わりの一夜、久しぶりにおしゃれをして夜の街へとくり出した。
           ◇  ◇  ◇
     若い時は知らないが、こんな小さな町の家庭の主婦に納まってか
    らは、スナックなどにはとんと縁がなくなってしまっているから、
    落ち着いたムードの店の立派な革張りのソファにかけて、色とりど
    りの飲み物を前に大喜びである。

    「あら、おいしかー、このカクテル。ちょっと甘くて」
    「それ、何ちゅう名前のカクテルね?」
    「知らん」
    「わあ、名前も知らんで飲みよると」
    「名前も知らんばってん、おいしかよー」
     そうそう、おいしければいいのだ。名前など知らなくても。

     「一曲どうぞ」とマイクが出て来た。一番年の若い野上さんがき
    れいな声で、私にはとんと理解できない若い人向きの歌を歌うと、
    向こうの席で飲んでいた知らない男性までが「うまいうまい」と拍
    手をする。

    マイクが一巡するころには皆、適当に酔っ払っていい気分になった。
     こういう場合、わいわいがやがやの行き着く先はお定まりの上司
    のこき下ろしである。ストレス解消にはこれが最も良い。

     さっそく皆に一番なじみの深い店長が槍玉に上がった。
    「店長くさ、若い子には鼻の下のばして、わがままば聞いてやるくせ
    に、私たちにはいろいろ文句ば言わすとよ。くやしかね」

    「そうそう。この前もね、私がアルバイトのアイちゃんにちょっと激
    しく言うたら、あんまり言いなすなて叱られたとよ。アイちゃんがよ
    か仕事ばするごとと思うて言いよるとにね」
    「ほんなこつ、店長はいつでんそう」
    「祭りの時にゃ、店におりもせんくせにね」
    「ほんとたい。何日も何日も大蛇山と遊んでばかりいるくせに」
     店長、散々である。
           ◇  ◇  ◇
    そのころ店長は、閉店した売り場でせっせと後片付けをしていた。
    店長も今の惣菜部の人手不足と、それによる部員達の苦労は充分すぎ
    るくらい分かっているから、
    「註文が入ったら聞いといてくださいね」
    「売り場の整備、お願いします」と言いつけて皆が出かける時も、
    「はいはい、わかったよ。行っておいで」とニコニコ笑って送り出した。

    お金を入れた封筒を、そっとチーフの手に握らせもした。部員達が楽し
    く騒いで英気を養ってくれることを誰よりも喜んでいたからである。
    「それにしても・・・・・・」と、時計を見ながら店長は考えた。もうすぐ十
    時になろうとしているが、駐車場には部員達の車がズラリと並んでいる。
    「女ばっかりだし、それにみんな家庭の主婦だからなあ。あんまり遅く
    ならない方がいいがなあ。迎えに行ってやろうかな」

     行き先はわかっている。部員のひとりの同級生がやっているO市のス
    ナックだ。よし、迎えに行ってやろうと決め、電話をしてまだ店にいる
    ことを確かめると、九人乗りのワゴン車に乗り、口笛を吹きながら走り
    出した。
    「みんなびっくりするぞ。帰りのタクシー代が浮いたと言って喜ぶだろ
    う、るんるん」
           ◇  ◇  ◇
     上司のこきおろし大会というのは実に気分爽快なものである。店長か
    ら始まり、店の主だった役職者を一巡すると、再び店長へ戻った。
    「店長ね、何も知んなはらんとよ。私達が苦労して作りよるエビマヨば、
    既製品ば買いよるて思うとんなはっとよ」
    「ええっ、ほんとね。たまげたね。エビの背ば開いて、マヨネーズば乗せ
    て、天火で焼いて、大変な思いばして作りよるとにね」
    「惣菜の仕事ば簡単に考えとんなはるごたるね」
    「くやしかね」
    「そういえば、こないだもね」
     まさにその時、入り口のドアがパッと開き、
    「やあ、みんな、迎えに来たぞ」という店長の朗かな声が響いた。
     悪口を言おうとしていた者はぐっと言葉を飲み込み、聞いていた者は首
    をすくめ、店内はシーンと静まり返った。
    「なんだ、なんだ。えらく静かじゃないか。楽しく盛り上がっていると思
    ったのに」
     盛り上がっていたんですよ店長。いい所へ顔を出さないでくださいよ。
    全く、噂をすれば影がさすとはこのことだ。油断もすきもありゃしない。
    なんだか、いっぺんに酔いがさめたような顔つきで、皆、しおしおと立ち
    上がったのである。

     
    作 荒木紀代子 画 やまだしんご
    〔庶民が創る ふだん着の 《《投稿専門誌》》 アルファ企画 Vol.49 より転載〕


    お店のご案内は http://bigoak.jp/

    キヨコさんと会長の散歩、じどさんの藤

    2010.05.11 Tuesday

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      キヨコさんの散歩 藤
      キヨコさんと会長の散歩風景です。
      店から歩いて10分のところの、迎町の「じどさん」(地蔵菩薩)の藤です。
      これは、5月3日の写真で、まだぎっくり腰の前です。
      見事な藤です。樹齢何年でしょうか。少なくとも60年以上です。

      キヨコさんのこねこ

      2010.05.11 Tuesday

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        キヨコさんのねこ
        5月9日の「金丸散歩」写真の文章で、キヨコさんがぎっくり腰をした原因のこねこです。
        鮮魚部のメグミちゃんとこに昨年暮れに生まれたのをもらったそうです。
        いかにもいたずら好きに見えます。
        オスとメスで、名前はオスが「うめ」、メスが「さくら」、平成22年2月22日に来たそうです。

        会長と散歩 その?

        2010.05.09 Sunday

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          金丸さかさ大津山
          金丸の出外れ、「がめん首」の下に、橋があります。ここから「逆さ大津山」を狙っていましたが、今日は、先日の雨で水量が増えていたのと無風状態だったので久々に「逆さ大津山」をゲットしました。以前は、「がめん首」に大きな木があり、ここに写っている左岸の木と対になり、絵になりやすかったのですが、農地改良整備で木が切られました。
          たまには会長の散歩もするものですね。

          会長と散歩 その2

          2010.05.09 Sunday

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            金丸がめん首
            すみません。初心者で、その?が横向きで出てしまいました。
            それから龍瀬川を少し下った金丸の出外れに、「がめ(亀)ん首」があります。何か祀ってあって、案内看板がありましたが、会長がゆっくり読ませてくれないもんで詳しくは知りません。鷹の原城のお姫様が何とか書いてありました。